新たな楽想は同じ3拍子でも、これまでと少し雰囲気は違います。もっとぼんやりした感じ。これまで、舞台上のやり取りをじっくり見ていたのですが、ここはちょっと引いて、全景を見るような感じです。だから音楽も、より柔らかくなったような感じになっています。前半は1小節が1拍のようなゆったりとした感じですね。

19.雨蛙の踊り

L'ENFANT ET LES SORTILEGES


 




ここは池から1匹ずつ
雨蛙たちがゆっくりと出てきて
夜風にあたって和むという場面です。

歌はありません。音楽だけです。

私が初めてこのオペラを聴いたとき
(残念ながら舞台を見たことはまだありません。)
この部分の音楽に魅了されました。
私にとって思い出の場面です。
こんな素敵な音楽を
何十年も前に作った人がいたなんて
信じられませんでした。

ヴァイオリン以外の弦の合奏で
優しい和音が空気のように鳴り続けます。
これは池の上を吹くそよ風です。
ホルンのソロがゆったりと
動きの少ないメロディーを歌います。
こんな少ない音で、
色んなことを感じさせてくれる
素敵な音楽です。

ラヴェルはホルンの使い方がとても上手でした。
一番有名なのは
「死せる王女の為のパヴァーヌ」の出だし。
金管のホルンは
正式(?)には
フレンチホルンて言うんですよ。
詳しい由来は分かりませんが
ラヴェルの音楽を聴くと
確かにフランスの楽器なんだろうなと納得してしまいます。
木管にイングリッシュホルンと言うのがあるから
それと区別するためなのでしょうが。

途中で突然
調が半音上がります。
ここはまるでフッとからだが浮いたように感じて
いつ聴いてもうっとりしてしまいます。
そして、
そのすぐ後、
ホルンが歌っていた線を
そのままフルートが受け継ぎます。
ここから伴奏にヴァイオリンも加わって
音楽がちょっと明るくなったように感じます。
楽想は同じなのに
楽器が変わると雰囲気が変わる。
オーケストラって魅力的です。

ここで蛙たちが出そろったのでしょうか、
すぐに先ほどのワルツの感じが戻ってきます。
音楽が活発になります。
フルートが歌っていた長い線は
背景に引っ込んではいますが
ずっと鳴っていますね。
ヴァイオリンもユニゾンで奏で始めています。
前景では
ワルツのリズムがはっきりと 聞こえてきました。
蛙たちが踊り始めたのです。

ラヴェルはワルツが大好きでした。
独立した曲でもワルツの名作をいくつか作曲しています。
「優雅で感傷的なワルツ」
「ラ・ヴァルス」
シュトラウスやチャイコフスキーのワルツも良いけど
ラヴェルもね。

話しを戻しましょう。
少しずつ音楽は静まって
ヴァイオリンとフルートがユニゾンで歌っていた
長い線だけが残ります。
もうフルートも休んで、ヴァイオリンだけです。

あれ、ここは大好きなシーンだから、
音楽の話しがメインになってしまいましたね。

舞台上では、
前半の静かな部分で雨蛙たちが池から徐々に出てきて
後半のワルツの部分で踊り回るということです。

最後のヴァイオリンだけの線になったところで
踊り終えた蛙のうちの1匹が
子供の所に寄ってきて
膝に手を乗せ
場面が





音楽が途切れ、また会話が始まります。

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