今度の事件は何でしょう。出だしは凄く静かです。コントラバスのソロです。

14.ネコのデュエット

L'ENFANT ET LES SORTILEGES


 




コントラバスは弦楽器ですから、
ポルタメントと言われる独特の奏法が出来ます。
弦を押さえる指を、弾きながらずらすのです。
すると音がズリズリズリっと連続的に変化します。
出だしのソロの音、
ブォーンイって上がっていくでしょう?
さっき椅子の踊りの所で
トロンボーンも似たようなことやってましたね。

子供は算数の勉強を一気にやったもんだから頭痛くなってます。
何て奴だ。
しかも間違いだらけだったのに。
横になったまま、頭が痛いと歌います。

そんなですから、舞台に新しい登場人物(?)が
現れたのにまだ気づいていません。
2匹のネコが毛糸玉でじゃれながらの登場です。
じゃれながら子供のそばに来て
今度は子供の頭で遊ぼうとします。
「あっ何すんだよ。あっネコだ。わっ、でかい。」
「お前たちもきっとしゃべれるんだろう。」
ネコは首を横に振ると
また毛糸玉で遊び始めます。
そして歌い始めます。
「ミャーオ、ミャーオ」

作曲者のラヴェルは私生活でも大のネコ好きでした。
この部分はオリジナルの台本になかったのを
ラヴェルが希望して入れてもらったらしいです。
手紙で「こんな鳴き声にして良いですか」と
台本作者に何度も確認を取っていたようです。
でも本当に不思議なんですが、
このネコちゃんたちだけ言葉をしゃべらないんですよね。
ミャーミャー鳴くばかり。

さてネコの歌は段々と盛り上がり
オーケストラの音も段々と派手になってきます。
ついには金管楽器がff(フォルテシモ)で唸り(うなり)始めます。
この音は、部屋の天上や壁が消えていく音です。
ネコに導かれて
子供は庭へと移動しだしたのです。

場面転換もオペラの魅力の一つです。
少しずつ装置が動いて
一つの場所が別の場所へと変わっていきます。
その舞台上の様を見るのはなかなか味なものですよ。
だって、壮麗な音楽の伴奏付きですから。
ワーグナーの「パルシファル」や
プッチーニの「トゥーランドット」なんかでは
場面転換も一つの見所になっています。



金管楽器の最強奏のピークで音楽がパタッと鳴りやんだとき、
あなたはもう庭の真ん中にいます。

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