はかなげな高音で子供へのお説教を締めくくると、炎は気ままに踊り始めます。ここは、子供と魔法という対立関係とちょっと離れた、一種の間奏曲のような部分です。ただし、息抜きというには、あまりにも音楽が重いです。

09.火と灰の踊り

L'ENFANT ET LES SORTILEGES


 




音楽がいったん静まると
静かに重く、弦の和音が鳴り始めます。
低音から徐々にせり上がってきます。
微妙に半音階が混ざって
一種の悪夢のような不思議な感覚です。
pp(ピアニシモ)から始まっています。
コントラバスはずっと低いレの音を延ばしています。
チェロとヴィオラだけが2分音符で
ゆっくりゆっくりと和音を変えます。
徐々に音が上がってくるのですが、
クレッシェンドの指示はありません。
最後までピアニシモのまま。
やがて第2ヴァイオリンが加わり、
さらに遅れて第1ヴァイオリンも加わって
ついには音の大伽藍(だいがらん)が出来上がります。
ピアノがずっとアルペジオで彩りを添えています。
そして、時々
炎の笑い声が聞こえますね。

ここは楽しげに炎が踊るというには
あまりにも音楽が妖しい(あやしい)です。
ト書きによると
ここでは炎の通った後に灰が生まれて
その灰が段々と大きくなって
ついには炎を包み込んで眠らせてしまうという場面なのです。
炎は消え去る前に最後の美声を聴かせます。
さっきのハイCよりさらに高いD(デー)の音を聴かせます。
炎が消え去る様を目の当たりにしていた子供が
恐怖に駆られて
「怖いよ、怖いよ」と歌います。
音楽がまた静まり・・・

するとまた何か新しい音が聞こえてきました。



かすかに聞こえるのは太鼓の音です・・・・・

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