ディン、ディン、ディンと消えていった古時計が黙ると、今度はトロンボーンが低音でうなります。するとフランスのオペラのはずが、英語が聞こえてくるではないですか。これはいったい何でしょう?

06.ティーポットとティーカップの対話

L'ENFANT ET LES SORTILEGES


 




How's your mug?(ご機嫌いかが?)
Rotten!(サイテー!)
こんな風に歌い出す2人。
カップルです。
さっきのソファーと安楽椅子のやり取りを思い出します。
今度はもう少し若そう。
だから、しゃれて英語なんか使っているのでしょうか。
さっき子供に壊されたはずのポットとカップのお二人さんです。
そして、会話が英語なら、音楽はジャズです。
と言っても、ラヴェルがこの曲を作ったのは1925年ですから、
その頃のアメリカのジャズです。だから、今聴くとちょっと古くさいジャズです。
打楽器やトロンボーンのスライドがジャズを意識しているのでしょう。
ところで、途中からカップさんが歌い出しますが、
ここから英語から、中国語(らしき言葉)に変わります。
陶器を英語でチャイナと言うからでしょうか。
でもよく聴くと、この言葉すこし変です。
だって、雪舟早川(セッシュハヤカワ)とか、腹切り(ハラキリ)とか出てきます。
他の部分は明らかに中国語みたいなのですが、
雪舟早川と腹切りはどう考えても日本語ですね。
早川雪舟というのは、当時ヨーロッパで人気のあった日本人の映画スターの名前です。
腹切りはもう分かりますね。切腹のことですね。
ここはちょっと息抜きって感じの軽い場面のようです。
だから、子供へのはっきりとした非難は出てきません。
でもポットさんは黒人のボクシングチャンピオンみたいに描かれているので
子供に向かってボクシングの練習をしているのかも。
(当時アメリカにはジャック・ジョンソンというもの凄いチャンピオンがいて、
彼は黒人というだけで色々嫌がらせをされたので
パリに来ていたこともありました。)
カップさんのハラキリも
子供に向かって、言ってるのかもしれません。
言い方は冗談ぽいので、ふざけてるだけでしょうけど。。
踊りが中心の場面かもしれません。
二人は、子供に構わず、踊りながら舞台を去ります。
一人取り残される子供。
音楽の方は、さっきからキラキラ鳴っていたチェレスタという
鉄琴のような音色の楽器のソロになります。
五音音階と並行4度の響きが、中国の雰囲気をプンプンさせます。
それをバックに、子供が歌います。
「僕のお気に入りのカップが・・・・・」
何言ってるんでしょ、さっき自分で壊したくせに。



そして、次はどうなるのかな?

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