イライラしていて、不満ばかり言う子供。空虚な音楽が続きました。でも急に綺麗な和音が鳴って、さあ何が起こるのでしょう。細かい出来事の変化と、オーケストラの響きの変化とが重なっています。

02.母の登場と怒り

L'ENFANT ET LES SORTILEGES


 




3本のクラリネットと1本のバスーンがしっかりした3和音(シレファ#の和音)を長く響かせます。
さっきまでの空虚な響きの後だと、何かホッとします。
そして、この響きに乗って、女の人が登場し、歌い始めます。
彼のお母さんです。
歌と言っても、しゃべっているように聞こえますね。
でも、楽譜に書かれた音符の通りに歌っているのです。
「良い子にしてた?宿題はもう終わった?」
どこでも、親の言うことは同じです。
「ま!何もしてないじゃないの、絨毯(じゅうたん)にはインクをこぼして」
すると今度は、オーケストラに弦楽器の登場です。
弦の和音は、管の和音とはまた違った味わいがありますね。
この弦の響きに乗せ、お母さんの声は少し高くなります。
「怠け者、恥ずかしくないの?」
すぐ後に、出だしのオーボエの響きが聞こえます。
そう、少年を表しているのですね。少年の歌はありません。
きっとそっぽを向いて黙っているのでしょう。
お母さんがまた聞きます。
「宿題やる?」
答はまたオーボエの響きだけ。
男の子はどうしているんでしょう。想像できますね。
音楽が舞台上のことを説明しています。
すると弦が鳴りやんで、今度はホルン4本の和音です。
ホルンに乗せて、お母さんが聞きます。
伴奏がホルンに代わりましたから、お母さんの声もより強まった感じ。
「謝りますか?」
この後が面白いです。
フルートがヒャラララッと早いフレーズを吹きます。
少年がお母さんに、アッカンベーとやったんですね。
お母さん、「オーッ」と声を上げ、倒れそうになります。
ここからオーケストラの響きが変わります。
今までロングトーン(全音符のような長い和音)ばかりだったのが、
木管や弦のピチカートの短い和音ばかりに変わります。
まるでお母さんの鼓動が早まったかのようです。
お母さんは自分の気持ちだけを一方的に言って、出ていってしまいます。
「夕ご飯まで一人っきりでいなさいよ。しっかり反省しなさい。宿題もやるのよ!」
一応おやつは置いていってくれたんですが、
紅茶は砂糖抜き、パンはジャム抜きです。
お母さんが登場した時と同じ和音が鳴って、お母さんの退場を締めくくります。



しばしの沈黙、そして・・・・・。

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